On the yellow guardrail

正字正かなユーザー刑部しきみの清く正しいつつましやかなブログ

夜、全裸、脱衣にて。

――ない。
jonathans家、脱衣場。タオルで頭を拭きながら、私は口元をへの字に歪めた。
アロマオイルを風呂に入れる事に気を取られ、着替え一式をタンスの前に置いてきてしまったらしい。パジャマはおろかパンツすらない。さすがにこの格好で廊下から台所を経由し、和室にまで向かうのはリスクが高すぎる。廊下に出れば左手には、大きく開け放された玄関。これはよろしくない。
濡れた手を拭き、携帯の着信履歴で母親の携帯の番号を探す。発信を押そうとして、廊下の足音に気が付いた。親父はまだ仕事から帰っていない。母親でなければ不法でクソッタレな殺戮すべき侵入者だが、多分それはないだろう。
私は足音の主に声をかけた。
「おかん」
「なんよ」
「着替えをタンスの前に忘れてきたので取ってきて欲しい」
「具体的には何が無いんよ」
「( 「おら東京さ行くだ」のふしで)ハァ パンツもねぇ! ブラもねぇ! パジャマの上下はある訳ねぇ!!」
「……ちょっと待ちぃ」
程なくして、母親がそっと脱衣場の扉を開け、着替え一式を突き出し、ぼそりとこう云った。
「……おらこんな娘いやだぁ〜……」