On the yellow guardrail

正字正かなユーザー刑部しきみの清く正しいつつましやかなブログ

無題

私が昔住んでいた所から自転車で10分くらい行った場所に、コンビニのようなもの*1があった。私が引っ越してしばらくしたら、そこはラーメン屋になっていた。
二ヶ月ほど前だったろうか。山口地裁の競売物件をチェックしていたら、見た事のある建物を発見した。それは、件のラーメン屋だった。間取り図を見ると、少しは内装に手を入れてあるものの、元のコンビニの様子がなんとなく思い出せた。私は気が付いていなかったのだが、店舗兼住宅であることも初めて知った。
それからというもの、たまに歯医者に行くときにあの店の前を車で通り過ぎていく時、なんとなくその店舗を見ていた。まだ営業はしているな。売れるのだろうか、こんな田舎の店。次もラーメン屋かな? そんな事を思いながら。
先日、三週間ぶりに歯医者に行った。その時、その店舗は灰色のコンクリートで出来た小さな瓦礫の山と化していた。おそらく、大部分の瓦礫は撤去された後なのだろう。囲いである緑色のネットに、半分程隠れている薄汚れたオレンジのユンボは、土曜日だったからなのか動いていなかった。
……ああ、売れたんだ。車を走らせながら私は横目でその敷地を見た。何もなかった。単純な赤地に白抜き文字で店名の書かれた店舗も、周りの電球がぺかぺか光るやけに大きくて安っぽい『営業中』の看板も。此処に何かが出来るのか、もしくは何もできないのか。私は知らない。そのうち、私は此処に何があったのかすら忘れてしまうだろう。ホワイトボードの上の地図みたいに、消されて書き換えられてまた消して書き換えて、その度に記憶が無くなってしまう。多分、ただそれだけのことなのだ。

*1:セブンイレブンとかローソンとかそんなメジャーなものじゃない