On the yellow guardrail

正字正かなユーザー刑部しきみの清く正しいつつましやかなブログ

真夏の夜に悪夢

真夜中、薄暗い自室で何気なく自分の腹を見た。
白いものが臍に入っている。それは半球に見えた。ああ、綿棒だ。深く入り込んだ綿棒をずるりと引き抜く。引き抜いた綿棒には、自分の内臓が絡まっていた。長さにして15cm程度。黒っぽくて、乾いていて、ぶにょぶにょと柔らかく、鳥の玉ひもをひっくり返した時の感触に似ていた。
これだけはみ出していると、指で押し戻すのもなんだか気持ちが悪いし、変な入り方をしたらまずそうだ。そうだ、一応准看護婦の免許持ってる人がウチにはいるじゃないか。私は両親の寝室のドアを開けた。
「おかん、臍から内臓っぽいのが出たんじゃけどどうしたらええ?」
母親は寝転んだまま、こちらを一瞥した。「……痛い?」
「いや、痛くはないけど気持ち悪い」
「こんな真夜中にどうしろって云うんよ……痛くないなら朝病院行けばええじゃろ」
そういったきり、母親はまた眠ってしまった。
私は自室で自分のベッドに腰掛ける。内臓はまだ臍からやる気なくぶら下がっている。ああ、臍の緒みたいだ。こんなものをぶら下げたまま横にはなれない。どっかに引っ掛けて千切れたらやばいし。このまま起きているしかない。
そして、いつもならうつ伏せに寝る所を、仰向けになって天井を見つめた。

――ここで目が覚めた。
私はしっかりとうつ伏せで寝ており、肝を冷やして思わず臍を触った。
そこには、何も無かった。ただ、母親と繋がっていた時の痕跡である穴が開いているだけだった。
私は、何もぶら下がっていない事に安堵して、また眠りに付いた。

余談

つーか思い出したらお腹痛いんですけど。