下女・袈裟菊

「――雨塔の件だが」
「透御嬢様に何か御用でしょうか」
雨塔家の下女、袈裟菊は横目でちらりと私を見遣り、そのまま通り過ぎようとする。
「下女風情が来客に失礼な態度をとるとはけしからんな」
「貴方は客ではないでしょうに。招いてもいなければ、事前の連絡も無い。おまけに無理矢理侵入とは――失礼にも程が御座います。そういった無礼者には相応の対応があります故」
そう云って、袈裟菊は軽く奥の部屋へ向かって右手を挙げた。緋色の扉が静かに開き、中から下女の服を纏い、白い仮面を被ったオートマタどもが片手剣を携えてこちらへと向かってくる。
「侵入者は殺します。雨塔の屋敷は事実上の治外法権ですから」

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背景の画像はG-TOOLの素材を使用しています。
メイドと云うより世界観的には「下女」さん。へその緒を巻いた状態で生まれてきた人には、名前に袈裟の字をつけたりします。