On the yellow guardrail

正字正かなユーザー刑部しきみの清く正しいつつましやかなブログ

白倉由美『おおきくなりません』

今日読了した本。
Theoria氏にこの本を借りた時に、作者の名前に引っ掛かるものを感じてその場でググった。
白倉由美 - Wikipedia

夫は作家、漫画原作者大塚英志

そうだ、電撃SFCでその名前を見たんだ。かつて『幼稚園戦記まだら』を描いた義見依久という漫画家が「山田ジャンは金遣いが荒いのでO塚株主原作者*1の奥さんのS倉さんが給料から強制的に貯金し、S倉貯金なるものを始めたがすぐに挫折した」という内容の漫画を描いていた事を思い出したのだ。つまりそのS倉さんが白倉由美の事である。
Amazonの書評にもあったけれど、これは私小説に近い。少なくとも、月哉が小説家で、麻巳美は元漫画家、大学に入って、小説家としてデビューする、という作品内の主人公の経歴はそのまま大塚英志白倉由美の経歴に似ている。
内容はまぁ、「おおきくなれない」イタい人達の話だ。どの程度かというと、主人公の月哉42歳と麻巳美35歳という年齢から20位引いても差し支えがない位。それを綺麗に綺麗に描いている。虚構と幻想。凄く少女漫画っぽい雰囲気*2。作者の背景を知っていれば私小説臭が見え隠れするけれど、そうでなければただの幻想的な物語として扱えるかもしれない。
なんか悪い作品みたいな書き方したけど、個人的には割と面白かった。私も「おおきくなれない」人間だからかもしれない。そして、私は先に「おおきくなった」人達に置いて行かれるんだろう。

*1:大塚英志メディアワークスの株を持っていたことからそう呼ばれていた

*2:この話を汚く醜く描こうと思えば案外レディコミみたいになるのかもしれない