On the yellow guardrail

正字正かなユーザー刑部しきみの清く正しいつつましやかなブログ

「私です」「違います」 -jonathansの偏在-

土曜日。外は雨である。
一人で四時間ほどのカラオケに行った帰り、しまむらに寄る。靴下を買って車に乗り、電機屋まで行こうとミラジーノを動かした時だった。一人の初老の作業服を着た男性がこちらに近づいてくる。「**建設」という胸のネームが見える。外は雨である。店内に居るうちにうっかりドアパンチなどでもされたのかもしれぬと、私はブレーキをかけて車の窓ガラスを下げた。
「……さんですか?」
「……はい?」
雨音と、カーステレオから流れるForcesの所為で聞こえない。
私はカーステレオの音量を下げ、体を少し窓の方に近づける。三月の雨は寒い。
「あの、先生の奥さんですか?」
……はぁ?
「違います」
「そうですか、すみません」
私は誰かの配偶者、つまり「奥さん」でもなければ「奥という苗字の人間」でもない。
ましてや教員免許もなければ講師助手以外の先生的活動もした事がない。
そんなもやっとしたカテゴリで云われてすら両方とも違うのだ。一体誰と間違えられたのか。
どうやら県内には自分に似た人間が多数いるらしく、しょっちゅう人間違いをされるのだ。一体私は誰なのだ。私が遍在する山口県は地獄絵図でしか無い。恐ろしいので似た人間はさっさと名乗りでて欲しい。