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On the yellow guardrail

正字正かなユーザー刑部しきみの清く正しいつつましやかなブログ

夢を見た

いつもの教室、いつもの學校と思しき巨大な建物の内部である。いつもといふのは、夢の中でしばしば訪れる事の出來る場所、と云ふ意味でのいつもの、と称されるものだ。
一番後ろ、ドアの直ぐ側の椅子には甲本ヒロトが學ランを著て坐ってゐる。
私はと云へば、教壇の當りを漂ふ人肉の欠片、生肉の部品を眺めてゐた。なんとなく手近にあった手首から先の人肉を手にとって食べてみた。
「美味しい?」
ヒロトに訊かれた。正直に云へば味は殆どない。だが、食感や舌触りは良い。豚足に似てゐる。
「うん、美味しい」
と答へ、私は骨をぷっと吐き出しながら指を殘して手の肉を食べた。そして捨てた指はまた邊りを漂ひ續ける。
教室を出ると、そこには私への重力はない。私は足をばたつかせて漂ひつつ、何十あるか分らない暗いベージュ色をした鉄の扉を横目にまっすぐに進んでいく。
夢の中ではいつでも色彩が淡くて暗い。だから夢だとすぐにわかる。
しばらくすると、巨大な下駄箱のような場所に出てきた。木製の下駄箱には、靴が亂雜に押し込まれてゐる。自分の靴なんか見当たらないので、上履きのまま外にでる。
外では何かの応援の練習みたいなものが行われてゐた。その一群の中の心當りの無い少女が私に向かって話しかけてくる。
クロマニヨンズのライブ、中止になるかもしれないって」
私は何も答へない。ふうん、と心のなかで思っただけだ。だってさっきヒロトを見かけたんだから。私はまたバタ足でその場を去って、校内へと向かう。
壞れた机が開きっぱなしの壞れたドアの向かい側で暴れてゐる。作業員が手早くロープで机と椅子を結びつける。其処から先には行けなかったので、手前の階段で上へ昇ってみる。
文化祭の飾り付けの樣な、ちゃちな紙製の飾りなどがそこかしらに貼り付けてある。顏の描かれたお花の横を通り過ぎる。左手にバルコニーがある。何気なくそちらを見ると、誰もいない運動場があった。興味が無いので更に奥へ向かう。
ひとつだけ開いている扉があった。私はそこに手をかけて、扉を開いた。
夢は其処で終った。