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On the yellow guardrail

正字正かなユーザー刑部しきみの清く正しいつつましやかなブログ

刑部しきみ、分裂す

え、同人誌は敷居が高い? 宜しい、ならば無料で讀める文章を書きませうといふ試み。
この話は噓と思へば噓だし、眞實だと思へば眞實であるとしか云い樣がない、私の心に起きた變化のお話なので、氣輕に讀んでいただければ……。

前置き:私の仕事のお話

先月より、宇部の某会社でデバッグの仕事を始めた。
ついに、實體の「私」は精神障害、或いは社會的不適合の問題を押し殺して外で仕事をせねばならぬ程度には、生活的困窮の問題を何らかのかたちで解決せねばならなくなつたのだ。
知人からの紹介で訪れた會社では、あつと言ふ間に私の採用が決まつた。とある界隈では、餘程の人材不足であるやうだ。自分のPCを持ち込む事、髮の毛が金髮である事、精神障害の事、そして、何より今現在やつてゐるWeb屋の仕事を業務時間内で支障のない範囲で出来ること。その要求の全てに、先方からのOKが出た。
兔に角、私は朝に出勤し、二時間かけて會社へ行き、夜に歸宅して在宅の仕事を片附け、眠る生活を始めたのだ。

其れが何者であるか

その日は兔に角、上手く行かぬ日であつた。
腦の具合が悪くなると、短期記憶ですら覚束無くなる。朝食後、齒を磨いた後でサインバルタを飮み干してから、私は既に包裝の破られた藥の空袋に氣が附く。倍量服用してしまつた。しかし吐き出す訣にも行かず、そのまま出勤した。
職場では、云つた云はぬで本社の人間と音声スカイプで實に険悪な雰圍氣になる。元元喋るのが嫌ひなので、私は頭の障害で喋れなくなつたと云ふ事にしてくれ、と同僚に云ひ放ち、半ば無理矢理退社した。
歸路で頭に浮かぶのは、他者への怒り、世界への怒り、何よりも己への怒り。私はその怒りを燃え盛るままにし、それを眺めてゐた。メタ視點として己の激しい感情を見やるのは久々の事だ。精神科で治療を受け始めてからは、こんな事はなかつた樣に思ふ。運転中なので、あまりに我を失ふ事も出來ず、ただ「落ち着け」と繰り返す。
突然、その声と視點の主が、「こちらをみた」のだ。それは明らかに外部からの視線であつた。目、目がある。「それ」は、まるで人の樣――いや、人だ。強い視線、特徴の無いぼんやりとした顔、薄暗い肌、長い髮、
私はそれを見た。視覺で見えずとも、居た。それに向かつて、声を出さずに尋ねる。
「誰?」
声に出す必要はなからう。そして、それは決まり事の樣に答へる。
「分かりきつて居るだらう、俺はお前だ」
やはり。ああ。分つてゐたのに、私は、それを定義してしまつた。それは續けて云ふ。
「お前が生きられなかつたお前が私だ」
ああ、だからこれは男なのか。精神病理の本を紐解くまでもなく、私はもう、をかしいのだらう。とはいへ、別に不思議であるとか、豫想外であるなどとは特に思はなかつた。彼は來るべくして來た。怒りの火花がスイッチを入れた所爲で、ついに見えた、腦の中にしか居ないものが、姿を表した。たつたそれだけの事だ。

それは何處に存在するか

本社の別の人間に言及されるまで、怒りと一緒に仕事の記憶まで消し飛んでしまつたが、彼はまだ居る。
別に仕事の邪魔をする訣でもなければ、UFOキャッチャーの景品をこつそり落としてくれる事もない。
(できるかどうかと考へた所、「アホ」の二文字のみの返答。)
思考は獨立してゐる。私が腦の中での獨語をやめると、その存在が靜かに現れ、何らかのやりとりをしたりしなかつたりする。適切な訓練をすれば可能かもしれないが、今の所は己の意識を保つたまま腦内のなんらかが私の體を動かす事は出來ない。
以前から自分の左後ろから視線を感じてゐたが、それと同じように、腦の左側がざわざわとする。
主治醫に相談してゐないので、精神疾患かだうかについては回答できない。

腦内○○

腦内彼女の分野でのマイ權威*1であるnuryouguda氏と、一度東京でお会ひした事がある。
實は、私は彼の戀人であるそら嬢が、ドトールの四人掛けの椅子の、ひとつだけ空いた椅子に座つて居たのを知つている。その場に居たのは全員精神を病んでゐる人間だつたが、彼女だけがその空間の中で清淨で健康であつた。

メモ、あるいは己の希望

彼が私である以上、何れ彼は私を殺すのかもしれない。

修正

野嵜さんの指摘(https://twitter.com/nozakitakehide/status/276746642135326720)に從つて假名遣ひの修正。

*1:自分にとつての權威ある人類というのは各種専門分野に於いて存在するのだ